牛生レバーの販売・提供の禁止から3カ月。「失われた味」を忘れられない愛好家は今も多い。
主役が抜けた市場では、規制外の豚を中心に激しい「後継争い」が繰り広げられている。
東京都内に昨春出店した居酒屋。豚のあぶりレバ刺しやハツ(心臓)、ガツ(胃袋)なども刺し身で出す。
店長は「違法ではなく、皆さんが好んで召し上がる。鮮度や衛生も徹底している」と胸を張る。
今年7月からの牛生レバー規制を見越し、6月ごろから予約の電話が急増したという。
「牛でないから安心です」。牛生レバーの提供禁止後、こんな触れ込みで豚のレバ刺しを出す店が増えている。
しかし、食中毒対策を研究している医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部の山本茂貴部長は「元々豚は生で食べるのは常識外」と驚きを隠せない。
生の豚肉は、寄生虫のトキソプラズマやE型肝炎ウイルス、細菌による汚染の危険性があり、E型肝炎を発症すると、重症化し死に至るケースも報告されているからだ。
9月末、東京都内で開いたシンポジウムで、山本部長は「今回の法規制は鶏肉や豚肉の生食が安全という意味ではない」と強調した。
後がまを狙うのは豚だけでない。
東京・新橋の九州料理専門店「桜藩」では6月以降、1日に3〜4人前しか出すことができない馬生レバーを予約する人が増えている。
味は牛生レバーとほぼ同じ。澤尻剣士店長(31)は「メジャーな食材でないので、認知度が高まればうれしい」と話す。
食用馬の飼育頭数が全国最多の熊本県で、飼育から出荷までを手がける千興ファームでは、希少部位の生食用レバーに、夏以降、県内外から注文が殺到している。
こんにゃく業界も熱い視線を送る。
こんにゃく製造会社「ハイスキー食品工業」(香川県)は昨年8月、見た目や風味がレバ刺しそっくりの製品を発売。
業務用だが、牛生レバーの全面禁止に向けた動きを受けて需要が伸び、7月からは家庭向け製品の販売を開始。
こんにゃく芋の国内最大産地、群馬県の会社は、こんにゃくで“レバ刺し”を作れるキットのネット販売を始めた。
日本こんにゃく協会によると、こんにゃく製品の消費量はこのところ減少傾向。「全体の消費がアップするとうれしい」と期待する。
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